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土木屋さんが扱う土として、土の分子構造の説明と土質改良の原理を説明します。
粘性土は、吸着水により粘性があります。粘性土は一度掘り返すと締固めが難しく強度が低下します。
固化材により、土の吸着水と反応し、土が団粒化し、締固めやすくなり強度が出ます。
■粘土の構造と特徴
土を構成する元素は、酸素、ケイ素、アルミニウムで83%をしめます。
主に、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)で構成されています。
粘土鉱物は、シリカ層(シリカ)、ギブサイト層(アルミナ)が基本になって、これらが層状になって粘土を構成します。 土鉱物は結晶の端部にO原子、またはOH基があるため表面は負に帯電する。
シリカ層は端部にO原子がある。ギブサイト層は端部にOH基がある。
シリカ層、ギブサイト層が数層で、粘土粒子が構成されています。粘土鉱物は、結合が弱いので積層数は少ないです。また、生成の課程で何らかの欠陥ができるので層の広がりが限定されます。ALがMgと置き換わったり、層の間にK+イオンが入ったりし、複雑です。そのため、微粒で表面積が大きいです。負に帯電しているので粘土粒子は、互いに反発しています。
■粘土はなぜ粘性が高い
水分子は構造が非対称なので、+-極を持っています。(酸素に2個の水素が対角上でなく一方向に2個並んで結合しているからです。)従って水の+側が粘土粒子に引き寄せられ結合します。
粘土粒子の周囲に水を吸着し結合した水を吸着水と呼びます。 吸着水は粘土粒子に電気的に結合しているため、普通の水と異なります。 沸点は高く、氷点は低く、さらに粘性が高くなります。
粘土がねばねばするのは、吸着水の粘性にるものです。
■粘土は1度掘り起こすと強度が低下する。
粘土は、長年の土の圧力で、粘土粒子、水の分子が安定な状態で結合しています。しかし、一度掘削しほぐすと、土粒子に間隙ができます。間隙に吸着水があります。このため、粘土を締め固めると押し付け力が吸着水に働き、方向が分散して働くので、土を有効に締め固める力となりません。このため、掘り起こした粘性土は、締め固まらず強度が出ません。
時間が経つと圧密して地盤沈下の原因になる恐れがあります。このため、一度掘り起こした後の構造物(管回り)の埋め戻しには、粘性の少ない良質土を使用するようにしています。
■固化材の土質改良原理
-生石灰による土質改良-
①吸水反応
固化材中の酸化カルシウムCaOが水と反応し、水酸化カルシウムCa(OH)になります。この時、固化材量の45%重量の水を吸収し土の含水比が低下します。
②イオン交換
水酸化カルシウムCa(OH)は土中の水の中でCa++イオン(2価)となります。この2価の+イオンが、粘性土に結合している1価の吸着水と置き換わると、
置き換わった部分の表面が+になり、粘土の表面の-と結合します。
また2価の+イオンは粘土に結合している吸着水と直接結合もします。このため、粘性の元になる吸着水の帯電状況が変わり、粘性がなくなます。粘土は、団粒化し、粘性の無い締め固めのしやすい土に改良されます。
③ポゾラン反応による土質改良
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)のOH-イオンが、土中水をアルカリに変えます。土中水がアルカリになると粘土鉱物を構成しているシリカ(SiO2)やアルミナ(Al3O2)が時間が経つと溶出します。
このシリカ、アルミナと水酸化カルシウムCa(OH)2が反応し、水和化合物(カルシウムシリケート、カルシウムアルミネート、ゲーレナイト)を生成します。この化合物が団粒化し強度が増します。これをポゾラン反応といいます。
酸性土では、土中水がアルカリにならないので、シリカ、アルミナが溶出しません。これが溶出しないと、ポゾラン反応は起こりません。溶出しにくい土は生石灰では強度がでません。
有機質土などでフミン酸があると、水和反応を抑制するのでポゾラン反応は制限されます。
複合生石灰は、シリカ、アルミナを添加してあったり、フミン酸があっても水和反応を促進する活性剤が含まれており、ポゾラン反応を促進します。
-セメント系固化材による土質改良 -
④エトリンガイト生成
固化材中の石膏系(CaSO4)、アルミナ系(ALO)の 添加物が土中の水と水和反応しエトリンガイトと呼ぶ針状結晶鉱物を生成します。 エトリンガイトは土粒子間に橋状に生成し結び付け固化します。
このエトリンガイトにより、土は固化し強度が出ます。
■一般的に生石灰とセメント系固化材の使い分けは下記によります。
・土を改良し、その土を必要とする現場に運び使用する場合は生石灰を使用します。
土質改良プラントや、ヤードでの改良の場合です。ストックしてある改良土を、積み込みし別の場所に移動し使用しても強度は低下しません。団粒化した土同士が結びついていないので、強度はセメント系固化材をほど出ません。
・土を改良し、その場で構造物として使用する場合は、セメント系固化材を使用します。
現場で、改良し、そのまま使用する場所にて締め固める場合です。エトリンガイトで橋状に結びついた土を一度掘り返すと強度は低下します。